忍び寄る制度改正
◎団塊の世代の社会保障費の肥大化防止と少子化への対応
社会保険制度の財源保全目的の消費税引き上げの先送りが決定し、今後ますます社会保険制度の縮小が現実となってきます。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、介護や治療が必要な高齢者の数が急増するとみられています。2014年6月に「医療介護総合確保推進法」が成立しました。
介護保険、医療(健康)保険は給付縮小などの大きな見直しが行われます。今後(現在施行済も含めて)の介護・医療(健康)保険の変更点を熟知しておくことで、現役世代の方も老後の準備が必要となってきます。なぜなら、一旦縮小した補助制度を更に縮小することはあっても、復活することは従来の国の政策では考えられないからです。
今回は、介護保険・医療(健康)保険制度のうち「公的介護保険制度」の変更点と、検討項目となっているポイントをわかりやすく解説します。
◎公的介護保険の改正ポイント(資料参照)
①介護保険の自己負担割合の変更(平成27年8月開始)
まず、介護保険の自己負担割合が一律10%だったものを、年間所得の高い方には20%負担していただこうというものです。
②施設の食費・居住費補助の対象を縮小する措置
次に施設の、食費・居住費補助の対象割合の区分選別で対象となる範囲を縮小しようとする措置です。一つは「配偶者の別世帯収入については収入の算定上、従来の別世帯(世帯主が夫と妻が各々世帯主とする登録)収入として認めていたものを、同一世帯収入とするというもの。」 です。
仮に妻が介護施設に入居して公的老齢年金の受給額が少なければ、夫の収入に関わらず妻の収入で補助率が決定されていました。変更後は夫の収入も合算されるため、補助率が低くなり自己負担額が事実上増加する場合が出てきます。ただし親子間の別世帯は従来通り認められます。
また、同様な措置として「本人、配偶者の資産報告義務と資産上限の設定」があります。これは年間の収入以外に、現状所有している資産が豊富な対象者の方には、介護保険の補助割合を小さくしようとするものです。 この2つの措置により介護保険の支給額の増加を少しでも抑えることになります。さらに今年(平成28年)8月からは税務上非課税である「遺族年金」「障害年金」の受給者の方も、この補助割合の縮小の対象となります。
≪資料≫ 公的介護保険制度の変更点(平成27年8月開始分)
1)一定所得者の自己負担2割に増額
2)施設の食費・居住費補助の対象を縮小(配偶者の別世帯認定を廃止)
3)施設の食費・居住費補助の対象を縮小(本人・配偶者の資産報告義務と資産上限の設定)
(預貯金等の範囲)
勘案の対象とする預貯金等の基本的考え方は以下のとおり
・ 資産性があるもの、換金性が高いもの、かつ価格評価が容易なものを資産勘案の対象とする。
・ 価格評価を確認できる書類の入手が容易なものについては添付を求める。
(対象となる預貯金等の金額)
・ 預貯金等について、単身の場合は1000万円以下、夫婦の場合は2000万円以下であることを要件に追加
4)相部屋の部屋代の値上げ
筆者:小澤