年金の訴求請求

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・・・宙に浮いた5,000万件のその後
平成25年11月9日

平成18年頃から社会問題となっていた、持ち主のわからない年金記録はどうなっているのでしょうか。もう、片付いてしまったのでしょうか?

年金機構の取組状況によると、現在では、解明作業中の記録は、2200万件程度になっているそうです。

当時も総理大臣であった安部首相が「最後の一人に至るまで、記録をチェックして・・・」とエネルギッシュに述べられていた記憶があります。ここに、5000万件のうち2件の事例をあげてみました。

年金時効特例法(従来の遡及請求5年分以降、受給権発生当時から遡及請求できるというもの。平成19年7月施行)も含めてご紹介します。

★例えばどんな時にみつかるのか?

(1)自分の老齢年金請求時

 これは、以前から年金請求に行くと、窓口の方が、「あなた・・・昔“は”のつく会社に勤めていませんでしたか?千葉県の方ですが・・・」「あ~そういえば、ただ、パートでほんの数か月ですよ。確かぁ~~~半澤銀行???」といった具合で、見つけていました。5000万件の1件が解明したわけです。

(2)遺族年金の請求時

遺族年金の請求をする時には、年金受給者で死亡した者、及び遺族年金を受け取る配偶者の記録を確認してから、年金額を確定します。すでに年金を受給していらした高齢者等の方は、宙に浮いた5000万件については、ネガティブであった方がほとんどです。年金事務所でやはり上記のような方法で解明していくわけです。
 この方々の昔の記録は、旧法の(昭和61年4月以前)の記録であることが多く、現在のように年金事務所(社会保険事務所)で、国民年金及び厚生年金を管理しているのではなかったのです。

国民年金であれば、市役所や市町村役場で管理しており、集金人の方が来られたり、家族の分をまとめて、役場に納めに行ったりしていました。また、国民年金と厚生年金は、別番号でしたから、いずれかに請求に行くと、残りの番号は、本人がきっちり申出ない限り、5000万件に入っていくだけでした。

国民年金の当時の記録に関しては、紙ベースで、市町村に残されており、最後の1件まで解明すると言われた頃から、社会保険事務所のコンピューターに、ぼちぼち入っていき、最近でこそほぼ年金事務所のコンピューターですべて検索できる状態になっている???という答えが返ってきたりしています。 

こういう記録については、5000万件に該当する事が多く、本人が請求し忘れていた場合ではなかった時には、年金時効特例に該当し、年金受給権発生当時に遡って、(従来の5年の時効以降の分も)遡及請求できるのです。

(3)年金特別便

 あの当時、「あなたの厚生年金の記録ではないかと思われる記録があります。」その黄色い封筒を見て、すぐアクションを起こした方は、ご自身の記録をゲットして、年金額が増加しましたが、忙しく封もあけずに放っておいて、60歳になったので、色々な通知をかき集めて、そういえば、20歳過ぎに母が国民年金を払っておいていてくれたはずだと思って、問い合わせても、記録は見つかりません・・・ という返事が来るのがほとんどで、じゃあ、あなたの記録ではないかと思われる記録はどこにいったのか?日本の佐藤さん・鈴木さん・山本さん・・・・は、年金記録のかるた取りやだと気の毒に思います。・・・ 

これは、失言で、実際は、申し出た方の住所・生年月日等と突き合わせて、その記録と合致した方にきちんと付け合せているのだそうです。

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このように、失われた年金記録は、ポジティブに制度にくらいついていける方だけが解明でき、忙しくて見る暇もないとか現状の年金額で十分に生活していけるのであれば、例えば、御主人が亡くなる等、事が起らなければ、なかなか最後の1件まで見つけるのは、無理だと予想します。多くの場合、古い古い記録なのですから。
また、見つかれば、見つかったで副作用もあります・・・(事例2)

★実際の2つの事例

事例1・・・厚生年金が見つかれば、倍返しの場合も。

 83歳女性(昭和5年生まれ) 夫の遺族厚生年金の請求時の事例 
結婚 昭和35年 結婚後は、簡易なパート以外は、専業主婦65歳から650000円/年額 国民年金を受給、自分の厚生年金が、昭和46年当時、6カ月見つかる。厚生年金6カ月で約7000円/年額 

この方が、65歳で国民年金を請求された時(平成7年)には、まだ、1人1つの基礎年金番号が統一されておらず、国民年金の請求をする時に、厚生年金の記録まで、見つけられなかったようです。
まさに、宙に浮いた年金記録になったままでありました。

☆それでは、厚生年金の受給権発生当時60歳に遡って受給できるでしょうか?×
 83歳から60歳まで遡る?×
 厚生年金は、1年以上納付していないと、受給権は、65歳発生です。
 83歳から65歳までの18年間です。

☆遡及額は、7000円※×18年=126000円でしょうか?×
 昭和61年4月までは、第3号被保険者制度はありませんでした。
 専業主婦は、任意加入でしたので、この方は、厚生年金が見つかった期間については、国民年金は未納でした。
 厚生年金の被保険者期間が見つかったことにより、現在でいう1階部分の国民年金期間も自動的に納付期間となります。
 2階部分とそれに伴う1階部分で倍返ししてもらえます。

 平成25年10月以降の年金額で計算します。(国民年金)

778500円※÷6か月×(12月×29年※)=13422円
          13422円×18年=241600円 

   ※ 昭和5年生まれの方は、40年ではなく29年で満額の年金額です。
 241600円(国民年金)+126000円(厚生年金)=367600円
 ざっと合計して36万円が、遡及して、振り込まれます。(2回に分けて)
 最初に遡及分5年 その後時効特例分13年に分けて振り込まれます。

※厚生年金の年金額7000円/年額は、仮定の金額です。(実際は、物価変動等による改定がありますが、考慮していません。)
※国民年金も同様、平成25年10月以降の金額での計算です。

 年金時効特例法が施行されるまでだと、遡及は5年間だけでしたが、時効特例法に該当する失われた年金記録の1件で、受給権発生当時まで遡及します。ただ、この方の厚生年金が発生したので、遺族厚生年金は、その分減額されます。(厚生年金が、優先して支給されるのであって、年金額総額は減りません。)多分、ご主人が亡くならない限り、この宙に浮いていた6カ月は、解明されないままであったと予想します。

事例2・・・思いがけなく1700万の年金が派生的に見つかった例

 大正12年生まれ、87歳女性 (平成22年当時)
 65歳より国民年金を受給中(旧法の年金 702000円/年額) 
平成22年(87歳)まで働く(個人事業主)
 昭和26年から36年の10年間の厚生年金記録判明
 通算老齢年金10年で約700000円/年額
    
 推移・・・長女が年金定期便に疑問があり、大学卒業後の年金記録の調査の依頼を受ける。 国民年金未納となっている期間に関して、母親が、集金人等に納付した記憶があるとのことで、当時の家族全員の納付状況等を調べる。当時の集金人等の状況を確認するために、市役所の国民年金課に問い合わせると、思いがけなく、母親の方に厚生年金の記録があることが判明。

 約10年間の厚生年金期間(通算老齢年金)定額部分+報酬比例部分(年間70万程度)が発生。遡ること、請求当時87歳から60歳まで、約1700万遡及請求。

 給与レベルの高い職務でもあり、また遡及期間も27年くらいなので、多額になりました。本人は、昭和63年当時、65歳の時に、昭和36年から昭和58年まで国民年金をせっせと納付してきたので、市役所で年金の請求をしたものと思われます。その当時は、今の年金制度よりも前の制度の為、まだ国民年金と厚生年金の統合等はされていなかったはずです。本人も厚生年金をかけていたことすら気づかず請求したはずです。市役所では、厚生年金の記録はわかりません。わかるようになったのは、ここ10年くらい前のことです。娘が自分の記録を調べたから、遡及請求がポジティブにできたものの、市役所の把握⇒年金事務所での記録確認⇒本人へお尋ね 高齢者の年金請求だったら、

いまだに、請求できていないかもしれません。

雑所得が発生すれば、当然税金が発生します。(副作用1)
 それでは、遡及請求した場合の所得に係る税金はどうなるのかということですが、まず、年金の一般的な遡及分5年間分(平成22年から平成18年)がまとめて振り込まれます。その後、時効特例分(平成17年から昭和58年)が、約2か月後にまとめて振り込まれます。時効特例分に関しては、税金はかかりません。

5年の遡及分に関しては、各年度の雑所得として課税対象になります。

この方の場合、65歳を過ぎていますので、120万までは公的年金等控除額があります。見つかった厚生年金(通算老齢70万)と当初より受給していた、国民年金(旧法国年約70万)を合わせて140万です。従来から受給していた国民年金に関しては、旧法国民年金です。70万だけなので、年金機構からの源泉徴収票に所得税は無です。この度見つかった旧法の通算老齢年金70万は、別の証書が送られてきます。

 そこで、旧法の国民年金と厚生年金は、現在のように2階建で考えるのではなく、別々なので証書は2枚になります。

 通算老齢年金も70万で120万未満なので、源泉徴収はされません。

但し、両方合計すると、140万>120万 20万が雑所得となり、18年から22年までの各々の年の確定申告のやり直しになります。

 年金機構では年金額158万(120万+基礎控除38万)までは、源泉徴収はしません。この方の場合、ご自身の事業所得がありますから、基礎控除は、事業所得で使いますと、遡及した5年間の雑所得は、課税されることになります。確定申告を5年分やり直すことが必要になります。
  とても、面倒なことです。

<参考>

旧法の年金が適用になる人

大正15年4月1日以前生まれ、または昭和61年3月31日に旧厚生年金の受給権、もしくは共済組合の退職年金(昭和6年4月1日以前生まれ)の受給権を有している人が受ける年金。

遺族が受給すれば一時所得(副作用2)

 また、手続きが遅れ、仮にこの女性が亡くなってからの請求だったとします。

遺族が死亡した受給権者に係る年金を請求することになります。未支給年金は自己の固有の権利として請求するものであり、相続税の課税対象にはなりませんが、今度は、その年の遺族の一時所得に該当してしまいます。遡及5年分に関しては、一時所得として課税対象となります。

以上、年金の遡及請求事例でしたが、これに遅延加算金がついたり、上記のように、年金を遡及請求したが為に、市役所から住民税の通知が届いたりします。高齢者ご本人だけではなかなか理解しにくいところがあります。国民健康保険料 介護保険料が訂正になったりもします。

遡及請求に限らず、年金の相談を受けると、その場で完結することはまずありません。後から後から、理解するのが困難な数字を伴った通知書が年金機構から送られてきます。また、年金は、夫婦両方の記録をみて答えていかないと、思わぬ落とし穴があったりします。長いスパンで事例に取り組む必要があります。遡及請求ついては、年金の歴史・旧法の年金・税金等の知識を持たなければ、理解しにくい点が色々出てきます。

ただ、まだまだ、解明されていない記録が少なくとも2000万件はあります。相談を受ける機会は出てくるかも知れません。その時に参考になさってください。

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